この時期まさかの南アルプス・鳳凰三山へと行ってきました。
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まさかあんな事になるとは・・・


11月も早くも下旬に差し掛かり、今年も残すところあとわずか。
恐らく年内のテント泊での山行は予定しているだけであと2回。その一つは今回の山行でした。
元々この山行予定自体は2か月くらい前から決めていて、当初は奥多摩辺りで1泊を考えていました。
しかし、10月に関東を襲った台風19号の影響で山岳域は大ダメージ。それに伴い、奥多摩でも歩けるルートが限られてきてしまったのです。
もともと今年3月の奥多摩小屋閉鎖によって、気軽にテントを張れる場所が減っていたところにこの台風のダメージ。
かつ、好天予報だった天気も週半ばには崩れ始め、奥多摩や丹沢近辺はほぼ絶望的。山クラスタも続々と週末引きこもりを決め込む人が出てくる中、せっかくの限られた機会なのでなんとか山へ行きたい・・
そこで狙いを付けたのが「南アルプス・鳳凰三山」です。
本当は北アルプスの方がより天候は良さそうだったのでそっちに行きたかったのですが、さすがにこの時期のソロだと遠いし雪のこともあるし。
幸い、南アルプスでも鳳凰三山周辺はまだ積雪も多くないようだし、週末は気温も高めの予報(これが結果的に裏目に出たんですけどね・・)。
そうなれば、4年ぶりとなる南御室小屋にテントを張り、初日にい三山回って、2日目に早朝稜線に出てご来光と雲海でも見られるかな・・という、かなり勝手かつポジティブな予定を立て、いざ金曜深夜に夜叉神峠へ向かった訳です。
ちなみにこの時点で天気予報は、土曜は好転→日曜は崩れる、というものと、土曜から崩れ、そのまま回復しない、という2つに大きく分かれていました。
自分としては前者を支持。最悪日曜は下山のみとなったとしても、土曜は何とか高曇り状態で持ってくれる・・という、楽観的なものでした・・・。

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土曜の深夜2時過ぎに、夜叉神峠に到着。
既に紅葉の季節も過ぎ、登山者の減った駐車場はガランとしてます。
ちなみにトイレは冬季用の1か所のみ、水場は止まってました(自販機でPETボトルの水は買えます。550ml/110円)。
早々にシュラフを車内に広げて3時間ほど仮眠を取ります。
 
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6時過ぎ。
初め寝付けなかったけどいつの間にか落ちていたようで、ヌクヌクのシュラフの中で起床。
外に出てみると、空は雲が晴れていて遠くに月も出ています。おお!これは・・・大勝利の予感!
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気づけば隣にも車。とは言えこの時間で停まっているの7台程度。やっぱりピークは過ぎてるので少ないですねえ。
軽く朝食を取ってからトイレ、身支度を済ませます。
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7時15分、まだ紅葉の残る登山口より出発。
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登り始めてすぐ、冬枯れの木立の間から青空も覗いてきました。11月下旬にも関わらず、まだ空気には柔らかさが残っていて、冬を感じさせると言うよりは秋の残りがまだある、といいった印象。
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朝陽に照らされる黄葉と谷に立ち込める朝もや。これだけ見てると晴れの確信しかない!
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それにしても気温が高い・・・キャプ4でも暑くてフロントジップは解放、腕まくりしてもまだ暑い。
とても晩秋の山とは思えないくらいの気温です。
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8時5分、夜叉神峠に到着。
流石に人はいなくてひっそりとしています。
小屋は閉まっていましたが、トイレが1基使用可能でした。

到着時点ではまだ上の写真のように白峰三山も見えていて、おお、これは上に行けば雪を被った稜線がバッチリ見えそうじゃないか!と期待大。
トイレを済ませていざ出発・・と思った矢先。
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辺りは見る見るうちにガスに飲まれてしまい、白峰三山も見えなくなってしまいました。
しかも霧雨まで降り出す始末・・・。
とは言え、まだ降ったりやんだりの状態、ここで敗退は判断が早すぎる。
さっきまで白峰三山が見えていたってことは、このガスはそう濃くないハズだ。標高を上げれば抜けるだろう・・・と思い、先へ進みます。
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相変わらずしんどいクマザサの先のザレた急登。
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そして、永遠に続くかのように思える杖立峠への登り・・・
ここも歩いてると、時折雨のようなものが葉に落ちる音が聞こえてきます。
しかししっかりと雨が降っているようにも思えず、風が木を揺らして落ちてきた水滴だろう、と思い先へ。
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9時20分、杖立峠に到着。
標高は2,000mを越えているけど、なお視界は晴れず霧雨、時折小雨といった感じ。
ただ樹林帯の中をずっと歩いているので、あまり雨を気にしなくても良いのが救いと言えば救いか・・・。基本、火事場跡までは展望がある訳でもないので、たとえ晴れててもガマンが続くことには変わりはない。取りあえず開けたところに出ればもしや・・・と、この時点でややネガな気持ちが過るも淡い期待を胸に先へ、先へ。
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ところがどっこい、火事場跡(1つ目?)のところまで来てやはり展望なし、視界無し、そして雨も小雨っぽくなってきた・・・。
キャプ4もしっとりしてきて、あまり濡れすぎると低体温を誘発するのでここで仕方なくレインウェアを着る事に。なんだか既に負けた気分・・・。
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この辺り歩いてる時は、ああ、まるで雨に濡れたトレイルは奥秩父っぽいなあ、なんて思ったりして気持ちを胡麻化そうとしていたかも。それでもなんとか火事場跡(2つ目?)に行けばもう少し希望が持てるはず・・。
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10時1分、火事場跡(2つ目?)に到着。
・・・おおう。。真っ白やんけ・・・
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北岳は?間ノ岳は・・・?
しかもまた小雨が・・・
ここからは木も低く樹林帯も薄くなるので、ついにザックにもレインカバーを装着。
すっかり重くなった足取りで先へと進むももの・・・

これ、午後は本当に回復するんだろうか?
もし南御室小屋についても雨だったらどうしよう。最悪冬季小屋使うか?
と言うか気温が下がれば雪になってもおかしくないけどこの状況じゃ雪にもならなそう・・
雨が続いてガスったままじゃ景色なんて見られない。そうなると仮に冬季小屋に泊まったとしても何しよう?お酒も限りあるし。

もう、ネガティブ思考が止まらない。
南御室小屋には、ここからならあと1時間程度。ただ、急げば2時間かからず下山は出来る。
温かい温泉にでも入ってのんびり帰ってもいいのでは。
無理して1泊しても、景色も全然見えないのでは泊まる意味がない・・・

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ピタリと足取りが止まってしまった。
もう帰ろ。
景色もなにもないんじゃ、寒い想いと濡れたテント仕舞って明日下山するより、今降りた方が良い。
あと年内1回テント泊の予定あるし、それでいいじゃないか・・・
苺平までは行こうかと思ったけど、結論は変わらないなら判断は早い方が良い。
10時34分、標高2,276m地点で無念の撤退。
下山開始です。

途中、何組か登ってくる人とすれ違う。
恐らく何も知らない人なら、前日から泊まっていた人が降りてきたんだな、と思うだろうけどすんません違うんです。自分は今日は撤退です。皆さんお気をつけて・・・
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11時5分、杖立峠に戻ってきました。
ここで小腹が空いたのでドーナツを1つ食べて小休止。休憩中もソロのハイカーが登っていくのを見送る。ああ、頑張ってくれ俺はもう温泉入りたいぜ・・。

ちょっとした事件は、この直後に起きた。
一人は大人、おそらく父親。
格好はスニーカーに上下はジャージ、鞄はユニクロかなにかのトートバッグを肩にかけてるのみ。
もう一人は小学生3年生位の男の子。こちらもジャージ姿で鞄は持ってない。
もう、見た瞬間「この二人ヤバい」となり、声をかけて静止を促す。

まさ「こんにちは、どちらまで行かれますか?」

すると驚愕の返答

父親「次の小屋って、あとどれくらいですかね?」

ええええ?
まさかその格好で南御室小屋まで行くつもり?
辺りは小雨も降ってて寒く、見たところレインウェアも持ってない、いやその前に子供もいるのに…!

まさ「ここからだとまだ2時間半から3時間はかかりますよ。」
父親「ええっ!そんなにかかるのですか??」

あぁ、ダメだこのままじゃ絶対ヤバい。時刻は11時過ぎ。南御室についても早くて14時、下山を考えると真っ暗になる。そもそも次の小屋までのCTも把握せず、まるでコンビニに行くような軽装。防寒着も無いし恐らくヘッドランプも持ってない。

まさ「すみません、見たところ装備が不安なので、杖立峠直ぐそこなんでそこまでにして貰えませんか?お子さんもいらっしゃいますし。」
父親「そうですよね…分かりました…」

父親はばつが悪そうに杖立峠に向かい、自分は後ろ姿を見送って再び下山開始。

声かけはした。
あとは父親が正しく判断してくれることを祈るしかない。
しかし下山中ずっとあの親子の事が頭から離れない。見た瞬間、フラッシュバックのように蘇ってきたのが、忘れもしない、あの昨年GWの新潟五頭連山の親子遭難のことだ。
あれだけ世間を騒がせた、悲しい遭難事故。
例え山をやっていなくても知ってはいるだろうに・・なぜ晩秋の、小雨の降るこんな寒い南アルプス、しかも標高も2,000mになろうかというところまで、どうしてそんな装備で来てしまったのか・・・。
思い返せば、子供の表情も暗くどこか不安げだった。
ああ、やっぱり一緒に下山すればよかっただろうか。

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不安を抱えたまま、途中何度も振り返りながらも11時40分、夜叉神峠に到着。
相変わらず小雨は降り続けている。

どうしてもあの親子の事が頭から離れない。
夜叉神峠小屋の軒下で雨宿りしていた老夫婦と少々会話をしながら、あの親子を待つことにした。
この夫婦がいなくなったら、食べ損ねたお昼を作って食べればいいし・・

と思っていたら、どうもこの老夫婦の旦那さんの方、とても話がウマい。
どうも聞くところ、山小屋で働いていた事があるらしい。ええ、どこの小屋ですか?と話を突っ込むと、熊ノ平小屋で、居候しながら小屋の手伝いをしていたらしい。
更に話を聞いていると、南アルプスが大好き、涸沢ヒュッテの山口さんと同郷で知り合い、残雪期に良く奥穂までスキー板を担いで上がってザイテングラートの横を滑って降りてたとか、野沢温泉出身でそこの山岳会に入っていて(いた?)、その関係で涸沢ヒュッテの山口さんと知り合いだとか・・あと、大月にある笹一酒造がオススメだとか、それはまあ沢山話を聞かせてくれた。
今思えば、お名前くらい聞いておけばよかったと後悔。しかし、南アルプスが好きらしくもしかしたらまたどこかで会いそうな気がする。
その時は山小屋でのんびりとお酒でも飲みながらまたお話を伺いたいものだ。

そうこうしているうちに1時間ほど経過。
まだ降りて来ないな・・と思っていたら、ひょこっとあの親子が夜叉神峠に降りてきた。
ああ、良かった・・・!やっぱり、これだけ小雨とは言え雨が降っているのにレインウェアも着ていない。
声をかけて少し話を聞いてみると、父親の方はどうやら4年ほど前に鳳凰三山を歩いたことがあるらしい。その時の記憶を頼りに歩き始めたようだが、どうも記憶もあやふやらしくルートもあまり覚えていない、とのことだった。
もはや疑いもなく完全に遭難未遂。今回は無事に降りてきてくれたからよかったけど、もし、自分があそこで引き返していなかったら、あのまま南御室小屋まで来てしまっていたんだろうか。それとも途中で引き返そうとして何かしらの事故になってしまっていたんだろうか。
取りあえず、今回は無事で本当によかった。
子供には大変だっただろう、よく頑張ったね!と声をかけると、初めて笑顔を見せてくれた。
きっと不安だったんだろうな。
お父さん、今度はしっかり装備と準備をして、天気の良い時に山に連れてきてあげてくださいね・・。

親子を見送り、老夫婦とも別れて、自分も後を追うように下山。
結局夜叉神峠登山口には12時52分に到着。
たった5時間程度の日帰り山行になってしまったけど、なんだか中身の濃い山行だったな・・・。

このあとは芦安の下にある天恵泉白根桃源天笑閣へ。
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ここが最高だった!
内湯のみで大きさは中規模だけど、湯船が高温・中温・低温の三種類あってどれも桧風呂!
この中温がめちゃくちゃ気持ちよかった…高温は江戸っ子向け、低温はほぼ水風呂。
しかも入浴料が600円とただでさえ安いのに、クーポン使うとさらに200円引きでなんと400円!
リンスインシャンプーとボディーソープ付き。
今まで下山後に時間合わなくて寄ってなかったんだけど今度からここにしよう…


2019年晩秋のテント泊は、残念ながら敗退となってしまいましたが結果色々とあった山行でした。
特にあの山小屋居候の旦那さんには、本当また会いたいなあ。
鳳凰三山、なかなかすんなりと行けないけど、来年に持ち越しかな。ただ来年はおそらく鳳凰三山、混雑する気がする。夜叉神峠から先、広河原までは行けるもののその先は先の台風19号の影響で法面の崩落、林道自体が崩れてしまっている箇所も多く復旧には数年かかるとの予測が出ている。
それを考えると山梨側からは仙丈や甲斐駒(北沢峠経由)に入れないので、その分手前の山にハイカーが集まりそうな気もするわけです。
まあ、そう単純な話でも無いかもしれないですけどね・・・。

と、長くなりましたが、次は年末の忘年会ハイクかな。
それまでに1回くらいは日帰りでどこか行っとこう・・・。